座談会でふり返る、豊岡市新ロゴマーク制作の裏側とデザインに込めた思い
豊岡市制20周年記念式典の後、採用デザインを応募した加賀直樹さん、選定実行委員を務めデザインリファイン(注)を行った徳田祐司さん(株式会社カナリア)、市長の3人が、新ロゴマークについての座談会を行いました。
注:リファインとは、既存のデザインをより良く磨き上げる作業のこと。
ついにお披露目されましたね。記念式典で市民の皆さんに初めて見てもらう瞬間はどんなお気持ちでしたか。
門間
幕が外されるまで、会場の皆さんがとてもワクワクしている様子が伝わってきましたね。舞台をじっと見つめながら「自分だったらどう表現するだろう?」と想像されているような。新しいロゴマークに高い関心を寄せてくださっているんだなと感じました。デザインされた加賀さんはどう思われましたか。
加賀
私自身は舞台袖でドキドキしながら待機していたので会場の皆さんの表情は見えなかったのですが、ロゴマークがようやく発表になるのがとても光栄で、その瞬間をしみじみとかみ締めていました。
徳田
会場はあたたかい雰囲気でしたね。ロゴマークを見ただけでは伝えきれない思いがリファインを担当した私にもあるので、その思いの部分を今日は座談会でしっかりお話ししたいと思っています。
豊岡市制20周年という節目に、ロゴマークをつくることにした目的や背景について改めて教えていただけますか。

門間
節目のタイミングには、過去を振り返るだけでなく市としてもう一歩踏み出すようなことが何かできないかなと思ったんです。「メッセージ」の他にもいろいろな場面で「目に触れるもの」があることで、市民の皆さんが同じ方向を目指して前に進むきっかけになるんじゃないかなと。そうした思いからロゴマークを作り、活用して次の一歩につなげたいと考えました。
市民一人ひとりがわがまち豊岡へ愛着をもち、市民だけでなく豊岡に関わりのある人たちが「このまちが好き」と感じて、さらに誇りをもてるように。そして、まだ豊岡を知らない人たちには、このまちの魅力に触れてもらえるように。そんなきっかけとなるような新たなロゴマークを策定するプロジェクトが動き出しました。
こうして生まれた! ロゴマーク制作の舞台裏
まずは、デザインを一般公募とした理由を教えてください。
門間
プロに作成をお願いするやり方もありましたが、今回は市民に限定せず広くデザインを募りました。市民の皆さんには、わがまち豊岡に改めて目を向けていただきその魅力や豊岡らしさをロゴマークにしていただく。豊岡をまだご存じなかった人もこれをきっかけに豊岡を調べたり訪れたりして豊岡のファンになっていただくきっかけにしたいという思いがありました。結果的に301作品も応募いただき、とても嬉しかったです。
加賀さんが応募しようと思ったきっかけと、ロゴマークに込めた思いについて教えていただけますか。
加賀
普段は教育関係のデジタル教科書のデザインをしているのですが、実は妻が豊岡出身で、お義父さんから「こんなんやってるで」と教えてもらったのがきっかけだったんです。十数年前、妻の実家に結婚の挨拶に向かう道中ものすごくドキドキしていたんですが、巣に佇む一羽のコウノトリの姿にふっとその緊張が和らいだのをよく覚えています。帰省の度に地域の人たちに「直樹さん、直樹さん」って親しく声をかけてもらうなどいつも温かく迎えてくれて。皆さんからいただいた気持ちにこのデザインを通して恩返ししたいという思いが一番強かったです。
市民、専門家、市職員から構成するロゴマーク選定委員会を設置し、応募作品の中から最終候補10作品が選定されました。この一次選定はどのように進められましたか。
徳田
301作品から10作品に絞るのにものすごく悩みました。応募作品はどれも個性豊かなデザインで、その中でもコウノトリをモチーフにした案が特に多い中で、加賀さんの作品は卵をあたためている姿を描いていたのが素晴らしいなと思って。また豊岡市が制定している「いのちへの共感に満ちたまちづくり条例」(注)を自然と思い起こさせてくれたのが加賀さんの作品でした。
注:「いのちへの共感に満ちたまちづくり条例」
2012年に制定した条例。これまで豊岡市が進めてきた政策やまちづくりの根底には“いのちへの共感”の考え方が流れていることを市と市民が再確認し「いのちへの共感に満ちたまちづくり」を進めていくこととしています。
市長
本当に良いですよね。まさに“いのちへの共感”を体現しているような作品だなと。また発案者である加賀さんの実体験から生まれたデザインだったっていうのもよかったですね。
徳田
条例って日常的に市民の方に伝わるものでもないですし、どうしてもカジュアルに取り扱うのが難しい。だからこそ、ロゴマークとしてもっと身近に感じてもらえるという意味で加賀さんの作品が採用されたのは大きかったと思います。
そして、ロゴマーク選定委員会で絞り込まれた最終候補10作品を対象に市民投票が行われました。市役所や図書館などの公共施設でのシール投票に加えてウェブ投票も行われ、合計投票数はなんと5541票。応募者のデザインとデザインに込められた思いが紹介され、各作品には市民から多くのコメントが寄せられました。
市民投票が始まり、あちこちでシール投票の様子を目にされたと思いますがどんなお気持ちでしたか。
加賀
家族が投票場所に行って「こんだけシール貼られてるよ」「今何位になってるよ」と速報連絡をくれて(笑)。とてもドキドキしながら結果が出るのを待っていましたね。
市民投票の結果を踏まえて、選定委員会で最終選考が行われました。どのような様子で進められましたか。
徳田
どのデザインも市民の皆さんから支持されていたので、委員の皆さんと時間をかけて協議しました。委員の中には、ロゴマークデザインをきっかけに豊岡市の花がチューリップであることを知ったり、どの地域にも魅力的な要素をたくさんもっていることを再認識したりした委員もいましたね。
採用作品の候補が絞られていく中で、選定委員会は市民投票でも1位だった加賀さんの原案をリファインすることを提案。その理由を詳しく聞きました。

徳田
豊岡市としては、新たに策定するロゴマークは性別や年齢、立場に関係なくたくさんの人々にさまざまなシーンで活用してほしいという思いがあることを事務局から聞いていました。市のロゴマークに必要な視点(審査項目)について委員の皆さんと話し合い、また加賀さんの意図を尊重しながらリファインを実施しています。
そして、リファインを経てついにロゴマークが完成。豊岡の暮らしと共にあるコウノトリが静かに羽を休める姿。卵をあたため、命を育むコウノトリに、豊岡が大切に守り育ててきた歴史や伝統を未来へつないでいく思いが重ねられています。

「“目”どうする?」 最後まで悩んだデザインの裏話
徳田
原案をより良い形に磨き上げるために、最後の最後まで議論されたのが『目』でしたね(笑)。
市長・加賀
(笑)。
徳田
原案ではコウノトリに目が描かれており、その愛らしい姿は選定時のコメントでも「可愛い」と多くの方が書かれていました。見た人の心を掴むチャームポイントの一つでしたが、率直に可愛すぎるな…と(笑)。

加賀
実は応募する時に自分でもふと「可愛すぎるかな」と迷ったんですが、応募は1人1回ですし、考えているうちに出し忘れそうで応募期間が始まってすぐにえいや! と出してしまったんです。
門間
私は当初、目があったほうがいいんじゃないかと思ってたんですよ。だけど徳田さんから「目があるとキャラクターのように見えてしまう」とうかがって。いざ完成したロゴマークを見た時には「なるほど」と納得しましたね。
将来にわたり長く使用できる耐久性と、あらゆる場面で誰もが使える汎用性を高めるため、徳田さんが行ったリファイン。原案の親しみやすさを損なわず、式典での使用も想定した結果、コウノトリの目は描かずシンプルな色使いの中でも卵を大切に抱える姿が一目で分かるようになりました。
徳田
“可愛らしさ”が皆さんの支持を得た理由の一つだと思ったので「目を無くしてしまうと原案のもつ愛らしさが損なわれてしまうのでは…」と最後まで葛藤しましたが、原案が伝えてくれる“いのちを大切に育む”という構図や概念を残すことを意識しましたね。
加賀
目が描かれていないことで、笑っているかもしれないし、休んでいるかもしれないし、見る人によって表情の捉え方も変わるのがおもしろく、さすがプロだなと。より末永く使ってもらえる洗練されたデザインにしていただけて私としても大変嬉しかったです。
まちに羽ばたくロゴマーク 広がる活用のかたち
完成したロゴマークを今後どのように活用してほしいですか。
徳田
豊岡市には、これまで積み上げてきたものを大切に守りながら新しいことにも挑戦しようとする姿勢があると感じています。完成したロゴマークを市内だけでなく積極的に外へも発信していくことで、市民の皆さんが改めてまちへの誇りや愛着を感じられるきっかけにしてほしいと願っています。
加賀
これから豊岡を訪れる際に「あ、ここにロゴマークがある」と自分自身で感じられる体験をしていきたいので(笑)。どんどん活用していただけるととてもありがたいですね。
門間
市役所だけでなく、市民の皆さんや各種団体、企業にも、ぜひ豊岡市のPRに活用していただきたいですね。まち中にこのロゴマークがあふれることで「いのちへの共感に満ちたまちづくり」を市民の皆さんと共有でき、みんなで同じ方向を目指して豊岡市としてさらにステップアップしたいと思います。
ロゴマークには、原案を作成いただいた加賀さん、市民投票で意見をいただいた皆さん、選定委員、デザインリファインを担当いただいた徳田さんなど、さまざまな方の想いが込められています。関わってくださった皆さん、市内外から301作品もの応募をいただいた皆さん、本当にありがとうございました!

執筆:田中里佳(地域おこし協力隊)
写真:トモカネアヤカ
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